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精神疾患が疑われる従業員への受診命令と受診を命じた場合の費用負担

仕事のミスが多くなり、身だしなみも言動も疑わしい従業員に会社がメンタル不調を心配し、医療機関への受診を勧め早めの対処を考えるケースがあります。会社が従業員に対し受診命令を行うことができるかは、就業規則に定めがある場合、健康管理上必要な事項について、その必要性および相当性が認められる限りは、病院の指定や医師の指定も含めて命じることができると考えられています。

一方で、治療に当たって医師を選択する自由は従業員にもあると考えられており、例えば事業者には労働者に健康診断を義務付ける一方で、労働者が選択した医師による健康診断の結果を提出することは許容されています。このような医師選択の自由が保障されていることを踏まえて、受診命令を根拠づける就業規則の合理性および相当性が肯定されるにあたっては、自ら選択する医師による診察を受けることを制限するものではありません。

したがって、病院や医師を指定した受診命令を行った場合であっても、労働者自身が決めた医師による診察を受けることを制限したり、会社の指定医以外を認めないといったことは適切ではありません。

また、就業規則自体の合理性及び相当性だけでなく、受診命令の必要性および相当性も問題となります。仕事のミスが多くなったり、身だしなみがだらしないだけでなく、欠勤や遅刻などの勤怠不良が生じているか否か、本人と面談を行って、心身の不調に対する本人の認識や原因の聴取なども行っておく方がより適切です。

事業者に義務づけられた健康診断の費用は、当然に事業者が負担すべきものですが、精神疾患への罹患が疑われている状況の医師への受診や検査費用について、特段の決まりはありません。そのため、いずれが費用を負担するかについては、労使間の協議によることになり、必ずしも事業者が負担しなければならないわけではありません。

ただし、実務上は、本人の意思に委ねていても受診もままならない状況では、休職に必要な判断材料が入手できないという事態もあり得ます。そこで、会社で費用を負担することにし診察を命じることによって、医師の診断書を入手することが多いと思われます。

受診命令に基づく医師の診察の結果、治療を要する状況になったときは、会社が受診命令をしたことをきっかけに治療をしたことになったともいえそうですが、もともと心身不調を来したのは従業員に原因があると言えます。事業者に従業員に対する安全配慮義務がある半面、従業員には自分自身の健康を保持する自己保健義務があると考えられています。また、労働契約の基本的な義務として従業員には使用者に対する労務提供の義務があり、不完全な労務提供を行うことは債務不履行として、労働契約の違反にもつながります。

従業員に自己保健義務があることからすれば、従業員が心身に不調を来したときは、医療にあたり健康な状態を回復すべきであり、その義務を履行するための費用については、従業員自身が負担すべきものです。

なお、心身の不調が発症した原因が使用者にある場合は、労働災害に該当し、労働者の治療費のほか休業補償や逸失利益なども使用者の責任になる可能性があるため、原因となるような負荷要因の存否については、別途調査しておく必要があります。(岡本)

 

 

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