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テレワークを前提に採用した社員に出勤勤務を命じることの可否

使用者は、労働契約上当然に、従業員に対して配置換え(配転)を一方的に命じる権利、すなわち「配転命令権」を有するものではありません。従業員に対して配置換えを命じるためには、あくまで労働契約上、その権限が使用者側に設定されていることが必要です。使用者の配転命令権については、就業規則において規定されていることが多いですが、個別の労働契約書等においてなされる場合もあります。

近時は「限定正社員」のように、無期雇用の中でも就業場所の範囲に制限のある社員区分がある等、配転可能な範囲がさまざまに設定されていることがありますので、個々の労働契約について配転命令権の有無や範囲を確認することが重要です。

たとえば、「テレワークを前提に採用した」という内容から想定される状況は、当該従業員について、入社直後の勤務場所をテレワークとしたうえで、かつ、①将来にわたって、入社時点での配属部署・業務から異動させないことを前提に採用した、または、②将来的な異動はあり得るが、あくまでテレワークができる部署や業務のみとする前提で採用した―といったケースが考えられます。

また採用の際、仮に、配属先をテレワークができる部署や業務に限るものと取り決めたとして、それは入社直後の一定期間のみとする趣旨なのか、それとも、労働契約が終了する全期間なのかについても整理する必要があります。

通常は、「出社通勤が基本」ですので、就業規則では会社に広範な配転命令権が設定されています。そうすると、将来にわたり会社の配転命令権の範囲をテレワークができる部署・業務に絞るとの個別合意がある場合、就業規則と当該個別合意のいずれが優先するのかという問題が生じます。

これについては、就業規則より従業員にとって不利な労働条件を定める場合を除き、労働契約のほうが優先されます。そのため、配転命令権の範囲が、就業規則よりも個別労働契約での取り決めの方が狭い場合や、個別労働契約では配転命令権が排除されている場合には、個別労働契約の内容のほうが従業員にとって有利であるため、就業規則上、配転命令権に関する規定が存在していたとしても、その規定は当該労働契約には適用されないことになります。

このことからも、配転の範囲について入社時にどのような合意をしたのかは非常に重要です。

従業員との間で労働契約の全期間において、配転の範囲をテレワークができる部署や業務に限るとの合意が存在している場合には、業務上の必要があったとしても、会社が一方的に出社勤務を要する部署に配置換えをし、出社勤務を求めることはできません。

もっとも、配転命令権は、あくまで使用者が一方的に配置換えを命じるものですので、会社から当該従業員に対して業務上の必要性を丁寧に説明し、場合によっては通勤に関する何らかの便宜等を図ることにより、当該従業員の承諾を得て、合意の内容を変更して配置換えを行うことは可能です。

労働基準施行細則の改正により、4月から労働契約を締結する際には、契約形態や期間の有無等を問わずすべての従業員について、雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加え、就業場所・業務の「変更の範囲」、すなわち、配転などによって変わり得る就業場所・業務の範囲の明示も必要になります(有期労働契約の場合は、初回の締結時と契約更新時のタイミングごとに明示が必要です)。

配置(就業場所・業務)の変更の範囲が労働条件明示事項に加われば、配転命令権の有無や範囲について、契約締結当初から労使が同一の認識を持つことができ、紛争回避に役立ちます。(岡本)

 

 

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