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育児・介護休業法26条に定める「労働者の配置に関する配慮」とは具体的に何をすればよいのか

育児・介護休業法26条では、転勤をする場合において、就業場所の変更により就業しつつ子の養育、家族の介護が困難となる労働者がいるときは、子の養育、家族の介護の状況に配慮しなければならない旨、定めています。

ここでいう「配慮」の内容として、厚労省の指針では、当該労働者の子の養育または家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向を斟酌すること、配置の変更で就業の場所の変更を伴う場合の子の養育または家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと等を例示しています。ただし、配置そのものの見直しや、育児・介護の負担軽減のための積極的な措置まで求めものではないとされており、少なくとも一律に配転不可、ということを意味するものではありません。

ただし、個別に事情を考慮すべき場合もあります。就業規則上、転勤命令に関する規定があり、かつ転勤命令に従うとの誓約書を提出しているなどの事情があれば、労働契約上、使用者は労働者に対して転勤を命じることができます。また、前述の通り、育児・介護休業法26条の「配慮」としては、配置そのものの見直しまでを求めるものではありません。ただし、①業務上の必要性がない、②不当な動機・目的で命じた、③労働者に甘受すべき程度を超える著しい不利益を生ずる-場合には転勤命令が権利濫用として無効となります。育児あるいは介護を行っている従業員に対する転勤命令は、このうちの③の観点で権利濫用とならないか、を検討する必要があります。

とはいえ、転勤により育児介護に支障がある場合でも、当然に転勤命令が権利濫用になるわけではありません。裁判例でも、本社から八王子事業所への異動に対して、通勤時間が長くなって幼児の育児ができなくなるなどとして異動命令を拒否した、という事例について、「保育のできない時間帯につき、経済的負担を度外視するならば、さらに、第三者に依頼することが可能であったのではないかとの疑問があるし、被告は、原告との間で、通勤時間及び保育問題等につき十分話し合ってできる限りの配慮をしようと考えていたというのであるから、いかなる場合にも現住居からの通勤が不可能であったなどということはできない」、「これによって上告人が負うこととなる不利益は、必ずしも小さくはないが、なお通常甘受すべき程度を著しく超えるとまではいえない」として、異動命令が権利濫用には当たらないと判断しています。転勤があった場合、程度の差こそあれ私生活への影響は生ずることとなりますが、通常予想される程度である限り、私生活への影響は転勤を拒否する理由にはならない、ということができます。

ただし、育児・介護が必要な場合において、その不利益が通常予想される程度を超える場合には、労働者に通常甘受すべき程度を超える著しい不利益に当たるものとして、権利濫用に当たると判断される場合があります。

また、転勤に当たり、他の社員を転勤させるなどにより、育児・介護など私生活上の不利益の大きい労働者の転勤を回避できる場合には、回避措置の可否を検討すべきです。

裁判例でも、一部署の廃止に伴う転勤に関し、「少なくとも育児介護休業法第26条の配慮の関係では、本件配転命令みよる被控訴人らの不利益を軽減するために採り得る代替策の検討として、工場内配転の可能性を探るのは当然のこと」として、代替策の検討を必要としています。

育児・介護が必要な家族がいる、ということをもって当然に転勤命令が権利濫用となるわけではなく、「育児・介護を行っている従業員に対しては、転勤を命じることができない」ということにはなりません。ただし、育児・介護による負担が大きい場合には、特に配慮が必要になる場合もあります。家族の中に高齢者介護の必要な人がいる、育児においても治療できる場所の限られる重病の場合など特に負担が大きい、といった事情を把握した場合、企業としては転勤対象者の人選を慎重に行い、ほかに適格者がいないかを含めた検討をすべきといえます。(岡本)

 

 

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