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生成AIの利用を業務で従業員個人が独断で使用することを禁止することは可能か

AIを活用したツールによって、業務の効率化が期待されることは間違いないですが、一方で、回答の正確性に疑義がある場合もあることや商業的な利用が可能であるかという問題など、その利用については、さまざまな意見があります。

企業によっては、有効利用する方針を採る場合もあれば、懸念される点を踏まえて利用制限する方針を採るところもあります。

そもそも、ChatGPTなどの生成AIを活用したツールについて、使用者が労働者に対して利用制限を行うことはできるのでしょうか。

使用者が、労働者が業務に用いるパソコンなどの備品類を使用者の負担で用意する一方で、自由な利用を制限することは、一般的に行われているところです。これは、使用者の所有する物的施設に関する施設管理権の一環として、自社の業務に用いるべき用具やツールを制限することの表れと考えられます。

また、使用者が、社内のパソコンにインストールするソフトウエアやインターネットの閲覧制限などを設けることがありますが、これらはスパイウエアなどによる情報漏洩のリスクを回避して、企業秩序を維持するために行われており、その制限に必要性があり、その内容が相当なものである限りは、使用者は制限が可能であると考えられます。

ChatGPTを利用することにより使用者に生じる懸念事項としては、①個人情報や営業秘密の漏洩など情報管理が行き届かないこと、②回答を鵜呑みにすることにより著作権の侵害が生じ得ること、③回答自体の正確性については担保されていないことなどが上げられます。

まず①の情報管理では、ChatGPTへの質問では、自社が把握している個人情報や機密情報を入力することにより、OpenAIがこれらの情報を取得する可能性があります。例えば、個人情報については、利用目的とは異なる利用となるおそれがあり、個人情報の目的外利用や漏洩に該当することになります。労働者がChatGPTにいかなる質問を入力するかを、使用者が直接制御できないため、このような懸念が生じます。

また、②著作権侵害については、ChatGPTが回答を示す際、第三者が著作権を有している内容を引用する可能性がないとはいえず、その調査を行うことも基本的には困難であると考えられます。

最後に、③正確性が担保されていない点ですが、各人が有している知識や経験によっても左右されるところであり、回答内容をそのまま業務に利用することが必ずしも適切とはいえません。

上記のような懸念事項があることは、これを制限する必要性を根拠づけるものであり、使用者が労働者に対して利用制限を行うことは可能と考えられます。(岡本)

 

 

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