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1ヶ月単位の変形労働時間制で、期間途中に勤務シフトを変更すること
1ヶ月単位の労働時間制とは、①労使協定または就業規則等において定めることにより、②1ヶ月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間(週40時間、または44時間)を超えない範囲内において、③特定された週または日に法定労働時間を超えて労働させることができる制度をいいます。
このうち、③所定労働時間の特定が求められている趣旨は、労働時間の不規則は配分によって労働者の生活に与える影響を少なくすることにあると解されています。そのため、各労働日の所定労働時間を就業規則等によってできるだけ具体的に特定しておく必要があり、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することは、1ヶ月単位の変形労働時間には該当しなくなります。以上を踏まえると、本来であれば、勤務シフトは就業規則等で定めなければならないものと思われます。
しかしながら、事前に就業規則等を変更し、特定しなければならないとするのは、実情に合わないため、このような場合には、「業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には就業規則において、各直勤務の始業・終業時刻、各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続き及びその周知方法を定めておき、それに従って各日ごとの勤務割表は、変形期間の開始前までに具体的に特定されることで足りる」とされています。
ここで、一旦特定した労働時間を変更することはできるのか。変更が認められるとした場合、「特定」しているといえるのかが問題になります。この点、就業規則において変更条項を置き、同条項に基づき特定した労働時間を変更する場合は、労基法第32条の2に反しないと解されています。
ただし、就業規則の変更条項は、「労働者から見てどのような場合に変更が行われるのかを予測することが可能な程度に変更事由を具体的に定める」ことが必要です。また、「使用者は、就業規則等において勤務を変更しうる旨の変更状況を定めるにあたっては、同上が変形労働時間制における労働時間の『特定』を要求している趣旨に鑑み、一旦特定された労働時間が使用者の恣意によりみだりに変更されることを防止するとともに、労働者にどのような場合に勤務変更が行われるが行われるかを了知させるため、上記のような変更が許される例外的、限定的事由を具体的に記載し、その場合に限って勤務変更を行う旨定めることを擁する」としています。
そもそも就業規則に変更条項がない場合には、使用者がいったん特定した労働時間を会社が変更する法的根拠がなく、シフト決定後の変更は認められないものと考えます。
他方、就業規則に変更条項があり、当該条項の内容が、変更が許容される事由を限定的に記載し、いったん特定した労働時間につき、労働者から見てどのような場合に変更されるのかが予測可能な程度に具体的に記載されたものになっているといえる場合には、変更条項に基づきシフト決定後の変更は認められると思います。
この点、変更条項については、特定した労働時間を変更する事由について、具体的に各号で明示する、労働者の生活に与える不利益を考慮して、変更する場合には1週間前までに通知する(予告期間を設ける)といった定め方、運用方法が考えられます。(岡本)
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