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担当職務の変更による賃金の減額を伴う配置転換は可能か

配置転換を行う際、配置転換先で役職に空きがなく、従前と同様の職位が維持できない場合や業務内容やポジションが異なることから等級変更となる場合において、賃金決定の仕組みによっては、賃金の減額を伴うケースがあります。

配置転換の有効性については、業務上の必要性が比較的緩やかに認められているため、無効となるのは例外的なケースに限られるといえますが、賃金の減額を伴う場合も同様に考えることができるかが問題となります。

賃金の減額について、懲戒処分で減給処分を行う場合には、労働基準法第91条により「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」として、制裁的に行われる場合でも上限が定められているなど、賃金は労働者にとって極めて重要な労働条件として位置づけられています。

裁判例では、賃金の減額を行うためには、原則として、労働者の自由な意思による同意がない限りは有効にならないと考えられており、通常の配置転換とは異なり、有効になる範囲はかなり限定されています。

そのため、賃金の減額を伴う配置転換については、配置転換のみを行う場合とは異なる配慮が必要となるほか、賃金の減額自体が、配置転換の要件である通常甘受すべき不利益を著しく超えているか否かの考慮事由にもなります。

賃金の体系は、大きく分ければ2種類の考え方に整理することができます。一つは、日本において年功序列の定期昇給を採用した賃金体系とともに採られてきた「職能給制度」です。

これは、労働者が獲得した能力は蓄積して失われることがないことを前提に、当該職務で発揮されている能力の範囲に限らず全般的な能力を評価対象とし、賃金に反映させていく発想です。この職能給を採用している場合、降格等に伴う賃金の減額は想定されないことになり、降格についての就業規則の根拠規定がなければ減額はできないと考えられています。

他方で、労働者の全般的な能力でなく、現在従事している職務の対価として賃金を設定し、職務が変われば賃金が変更になることを前提とした「職務給制度(ジョブ型人事制度)」があります。

理論的には、前者の発想に基づく賃金の類型については、就業規則上の根拠が必要なうえ、賃金の減額は難しい一方、後者については、職務の種類ごとの賃金体系が就業規則にあらかじめ定められていることから、配置転換に伴う賃金の減額も行いやすいといえます。しかしながら、実務的には、自社の賃金体系がいずれに該当するのか、さまざまな観点から分析が必要になります。

広く通用する発想としては、基本給に相当する部分は職能給的発想が用いられていることが多く、減額することは困難ですが、役職手当など役割・責務に与えられた手当に関しては、その立場を解かれたときには、当該役割や責務を負担する必要がなくなることから減額が許容されやすくなります。(岡本)

 

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