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懲戒処分を社内で公表することはプライバシーや人格権の侵害に当るのか

懲戒処分は、労働者の非違行為により企業秩序を大きく乱したことに対する「制裁」です。しかし、非違行為を犯し処分を受ける従業員であっても、その人格権に配慮する必要があります。他方、再発防止や綱紀粛清という観点から、懲戒処分について社内公表することを通例としている企業もあります。企業秩序びん乱の事実と、これに対して厳罰をもって処するという企業姿勢を明確にすることによって、再発防止効果を期待してのことです。しかし、上記のように、企業においても労働者の人格権の尊重という観点からすると、社内公表制度にはいくつかの留意点が見えてきます。

まず、懲戒処分が有効にされていることが必要です。懲戒処分につき、就業規則等の懲戒規定の該当性のみならず、相当性があることが求められます。また、懲戒手続きの履行も重視すべきです。慎重・厳正な事実関係の調査とともに、被処分者に弁明の機会等を与えることが大切です。懲戒手続きに瑕疵があったり、懲戒の目的が被処分者にことさら不利益を与えることを目的としていた場合などには、懲戒処分の社内公表が、人格権の侵害に当たるとされることがあります。

次に、公表基準について検討する必要があります。あらゆる懲戒処分を公表対象とするか、再発防止を特に呼びかける必要のある非違行為に対する処分のみとするのか(例えば法令違反、人格権侵害、横領等金銭にかかわる不正等)、一定以上の重い懲戒処分の場合のみとするか(例えば懲戒解雇のみ)を検討する必要があります。

最近では、電子メールで社内通知を行う例も見られますが、裁判例では、適法に退職したにもかかわらず、懲戒解雇を遡及して科し、その無効である懲戒解雇を事実であるかのように記した電子メールを全社員に一斉に送付したことについて、判決は、退職後に退職者に対し懲戒処分を科すことはできないから、当該懲戒懲戒を無効とした上で、その無効である懲戒解雇を全社員に電子メールで送付したことにより、社員はもとより業界内にうわさが広まったことにつき、人格権侵害を認め、会社に慰謝料として55万円の支払いを命じています。

また、公表内容についても、プライバシーに配慮して被処分者の所属や氏名を掲示するか否かも問題になります。教育的効果という観点からすれば、個人名を明らかにすることは必ずしも必要でなく、原則として名前の公表はせず、事案内容と処分結果、所属程度の開示にとどめるのが望ましいといえます。企業によっては、事案内容、処分結果についても、「就業規則××条〇項△号に該当する事実」につき「就業規則〇条×項△号の懲戒に処す」というように表示する例もあるようです。教育的効果や再発予防のインパクトは薄まりますが、事実を生々しく公表することによる「みせしめ」の印象がない分、よりプライバシーに配慮した表示方法をいえます。

個人情報保護法の施行により、労働者の個人情報保護に関して、一層の留意が必要とされます。労働者の「個人情報」には「処分歴」も含まれることとされています。社内において公表済みであったとしても、処分歴は個人情報に含まれますから、第三者からの照会等に対して本人の同意を得ることなくこれを明らかにするといったことは、厳に慎まなければなりません。(岡本)

 

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