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能力不足の社員を解雇するための指導や改善の機会はどの程度であれば足りるのか

長期雇用下の正規従業員の成績不良を理由とする普通解雇についての多くの裁判例は、まず、当該労働者が能力不足といえるかを、客観的かつ厳格に事実認定しています。そして、労働者の職務遂行能力が不十分であると認められると、次に、使用者による指導や配置転換の有無・回数や、これらによって、労働者が改善したかなどを検討しています。その際に、労働者の態度、職務内容の限定性や専門性の有無、労働者の健康状態などが考慮されることもあります。

上記の裁判例を踏まえると、「能力不足により人事評価が低い」ということであれば、まずは、人事評価がどの程度低いのか(例えば、同じ等級の社員と比べて低いということか、全社員中で最低評価ということか)、人事評価が低い原因は本当に「能力不足」といえるのかといった検討を行い、「この社員は純粋に能力不足により人事評価が低い」ということを確認し、そのことが分かる資料を準備するとよいことになります。

次に、その過程で判明した能力不足の点を改善するために適切と思われる指導項目を複数設けて、それぞれについて数値化できる目標(最低限クリアすべきライン)を設定することが重要です。これらを設定する過程に当該労働者も関与させ、指導項目が必要であることや、目標設定が妥当であることを理解してもらいながら進め、その過程も資料化(メールの保存や記録化)しておくことです。この過程で、当該労働者がどうしても改善の必要性を理解しないとか、他人に責任があるとして改善の意思すら見せないといった、別の問題点が判明することもあります(もちろん、こういった問題点は解雇の有効性を補強することになります)。

また、これらを設定するだけでなく、会社から労働者に対して、改善点のフィードバック、助言、トレーニング、研修などを提供することも必要です。フィードバックの間隔や回数は、指導項目や目標にもよりますが、継続的・定期的に複数回実施することが必要であり、その後半では、改善が見られなければ解雇という可能性があることを伝えることも有効です。

また、当該労働者の職務内容が限定されていないのであれば、配置転換により他の職務に従事させてみるといった対応が必要なこともあります。

このような対応には多くの人的負担が発生しますが、これについても言語化・数値化しておくと、当該労働者を雇用し続け指導を続けていくことが企業に著しい負担を与えるという主張の根拠とすることができ、解雇の相当性の判断に影響を与えることが可能になります。

一方、近時の判例で、「従業員が会社からの指導を受け止め改善する意思及び姿勢を示していなければ改善の余地がないところ、真摯な対応をせず、その指示に従わない姿勢を示し、勤務を続けることについても積極的な姿勢を示さなかったのであるから、原告と被告の間についておよそ適切なコミュニケーションを図ることが困難な状況であったといえ、そうである以上改善可能性がなかったと認められる」として解雇を有効としたものがあります( Zemax Japan事件 東京地裁 令3.7.8判決)。

能力不足が解雇事由とされた普通解雇の判断で、「コミュニケーション」が挙げられた点は革新的で、労働者の職務自体の遂行能力ではなく、職務に対する「姿勢」や「意思」さらには他者との「意思疎通」にも着目しています。(岡本)

 

 

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