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65歳までの定年延長と引き換えに60歳以降の給与を段階的に引き下げることの是非

定年に達する前に段階的に給与を引き下げる制度を導入するためには、就業規則の変更を行う必要があります。給与の引き下げを伴う就業規則の変更は、就業規則の不利益変更として、原則として、従業員の合意を得たうえで行う必要がありますが、就業規則の不利益変更が「合理的なもの」である場合には、不利益変更に合意していない従業員に対しても、かかる不利益変更の拘束力が及びます。

しかしながら、賃金や退職金等従業員にとって重要な労働条件の不利益変更については、「高度の必要性」が求められます。

例えば、会社の経営が低迷している中で、会社の定年間近の従業員の給与水準が他社より高く、経営体質改善のために、当該従業員の給与を抑制する必要があるといった事情があれば、「高度の必要性」が認められる余地はあると考えられます。

また、定年延長と同時に、この制度導入に伴うコスト増を賄う目的で定年前の給与の引き下げを伴う就業規則の変更を行っているのであれば、かかる変更に「高度の必要性」が認められる可能性はあると考えられます(定年延長に伴う人件費増に対応するために、55歳以上の従業員の給与の引き下げを伴う就業規則の変更を行った事案において、最高裁は「高度の必要性」を認めて就業規則の変更を有効としました。「第四銀行事件」)。

しかし、すでに定年延長が導入されている場合には、定年延長の導入に伴うコスト増の緩和を事後的に給与の引き下げの理由とするのは困難です。裁判例においても「定年引上げ時に就業規則の変更が行われなかった以上、従前の定年年齢(60歳)以降も従前どおりの給与を得られることは従業員の「既得権」であり、就業規則の変更は合理性を欠くとしたものがあります(「大阪厚生信用金庫事件」)。

その場合、給与の引き下げに拘束力が認められるには、変更の「高度の必要性」が存するのみでは足りず、例えば、①給与の引き下げに相応して、従業員の業務量を軽減させる、②給与引き下げ幅を従業員の生活に対して重大な悪影響が及ばない程度にとどめる、③給与引き下げによる不利益を緩和するための経過措置または代償措置をとる、④制度変更に先立ち、従業員との間で協議を行う―といった対応を、必要に応じて講じることが求められます。

定年延長と共に一定の賃下げを行う場合は、定年までの生涯賃金は従前より増加するように設計した方がよいですし、可能な限り多くの従業員の同意を取得した方がよい、ということになります。(岡本)

 

 

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