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割増賃金を毎月定額で支払う定額残業制で、設定時間を月80時間とすることは認められるか

定額残業代制の有効要件は、「定額残業代」が、割増賃金の弁済として認められるかという問題であり、定額残業代が、それ以外の賃金と明確に区分され(明確区分性)、かつ、時間外労働等の対価として支払われるもの(対価要件)であれば、ひとまず、その定額残業代制は有効と考えられています。

この点、定額残業代制において設定された時間外労働時間数につき、その有効要件との関係でどのようにとらえればよいかは、検討を要するところです。

定額残業代において設定された時間外労働時間数と、定額残業代制に関して判断がなされた事件として、ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件があります。この事件においては、「指針」(いわゆる限度規準)を超える時間外労働時間数(95時間分)を前提とする定額残業代制が、45時間の範囲で有効と判示されています。そのため、定額残業代制において設定された時間外労働時間数は、その有効性を判断する上で、直接的な要件にはならないと考えられます。

もっとも、直接的な要件にはならないとしても、「本来支払うべき時間外割増賃金等の支払いを免れるため」などの不当な目的がある場合や、定額残業代制の制度設計が不合理なときには、労基法の潜脱、公序良俗違反を理由として、定額残業代制が無効と判断される可能性があることはいうまでもない。

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件を参考にすると、定額残業代制において、法定の45時間以上の時間数を設定したとしても、直ちに定額残業代がすべて否定されるとまではいえないと思われますが、例えば80時間やそれを上回る時間数を設定した場合に、定額残業代制が、公序良俗違反となることや、あるいは、対価要件を欠くことを理由に、その有効性を否定されることは十分考えられます。

この点、「36協定で定めることのできる労働時間の上限の月45時間の2倍に近い長時間であり、相当な長時間労働を強いる根拠となるものであって、公序良俗に違反する」などとして、定額残業代制を否定した裁判例もあります。また、定額残業代制を直接の問題としたものではありませんが、「80時間の時間外労働を組み込んだ給与体系であると評価されてもやむを得ない」などとの判示もあり、長時間の時間外労働を前提とした定額残業代が、安全配慮義務との関係で問題となることは指摘されており、設定時間数によっては、公序良俗違反の判断につながることも当然に想定されます。これらの観点からも、定額残業代における時間外労働の時間数は、45時間以内に抑えておくことが無難と思われます。

なお、日本ケミカル事件では、対価要件に関して、時間外労働等の実態を考慮する旨判示されており、定額残業代で予定されている時間数と実態とがあまりにも乖離している場合には、対価要件が否定されることにもなります。(岡本)

 

 

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