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試用期間中の問題社員を解雇するより、会社が訴訟リスクを避けて合意に基づく円満退職を選ぶ理由

問題社員には、「業務命令に従わない」「ミスを繰り返す」「いじめやハラスメントで周囲を退職させる」「金銭の不正」など様々なケースがあります。

誤解が多いのは、試用期間中の従業員への対応です。試用期間中の従業員を解雇したことについて、従業員から不当解雇として訴えられ、訴訟トラブルに発展するケースがあります。また、試用期間満了のタイミングで会社側から本採用を拒否して雇用を終了する、いわゆる「本採用拒否」のケースでも、本採用拒否した従業員から訴えられ、訴訟トラブルに発展するケースも少なくありません。

試用期間中であれば、問題なく、解雇あるいは本採用拒否ができると会社が誤解されているケースが多くあります。確かに、試用期間満了後の本採用拒否は、通常の解雇よりも広い範囲で認められるという判例もあります。しかし、広い範囲で認められるといっても、実際には、試用期間中の解雇や、試用期間満了後の本採用拒否が無効であると判断され、会社が敗訴しているケースが後を絶ちません。

本採用拒否を無効としたケースでは、その多くが、裁判所は、雇用主が試用期間中の従業員に対して十分な指示や指導をしないまま、能力不足と判断して雇用を終了させたことを、解雇無効と判断した理由として挙げています。

また、新入社員をいったん例えば6か月あるいは1年といった期間の有期雇用としたうえで、有期雇用の終了のタイミングで、正社員としての契約を締結するかどうかを判断する制度を採用している会社もあります。これは、有期雇用の期間中の勤務ぶりを見て、正社員採用しない選択肢を設けることで、企業のリスクを少しでも回避しようとする制度だと思われます。しかし、裁判所は、このような勤務ぶりを見るためにひとまず有期で雇用するというやり方については、最初から正社員採用して試用期間を設けるケースと同等であると判断します。そのため、このような有期雇用の終了のタイミングで正社員採用しないことも、試用期間中の本採用拒否と同等のリスクがあることに注意しなければなりません。

このように、能力不足などを理由とする解雇を裁判所で正当と認めてもらうには相当なハードルがあります。そして、一番の問題点は、裁判になった場合の結論の予測可能性が低いことです。

多くの裁判で、「解雇の前により具体的な指導をすべきだった」とか「解雇の前に他部署で適性をみるべきだった」などという理由で会社が敗訴しています。しかし、では、「どのくらい指導すれば十分なのか」「どのくらい他部署で適性を見れば十分なのか」についての明確な基準はありません。解雇した場合に解雇が認められるか、それとも不当解雇と判断され多額の支払いと雇用の継続を命じられるかということについて、事前の確実な予測は困難です。

こういった点から、著しい能力不足で改善意欲のない社員など問題社員については、合意に基づく円満退職で解決する必要があります。

 

 

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