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行方不明社員を一定期間経過後に懲戒解雇や普通解雇ではなく自然退職扱いとすること

従業員が行方不明となり、長期の欠勤を続ける場合があります。こうした場合、使用者としては、まず、従業員本人の携帯電話に連絡をし、また、従業員本人の自宅に行き、連絡をとることを試みます。それでも連絡がとれない場合は、通常、従業員の家族等に連絡をとるということが行われます。使用者としては、無断欠勤を理由に、懲戒解雇あるいは普通解雇をすることも可能ですが、解雇は意思表示ですので、それが従業員に到達しない限り効力は発生せず、行方不明の場合には到達させることができないことになります(当たり前ですが、行方不明の場合、家族に対して到達させたからといって、それが従業員本人に到達したとみなすことはできません)。

とはいえ、これを退職扱いにしてよいかという点は別問題です。そうだとすると、一切解雇ができないかというとそうではなく、「公示送達」の方法によって、解雇の意思表示を到達させることができます。これは、従業員の最後の住所地である簡易裁判所に申し立てを行い、裁判所が裁判所の掲示場に掲示することで、官報に掲載した日付から2週間を経過した日に、従業員に解雇の意思表示が到達したとみなされます。ただし、この手続きには費用がかかり、また、従業員が行方不明であることを疎明する必要があるため、使用者からすると結構な手間がかかります。

そこで、考えられたのが、就業規則の自動退職条項であり、行方不明の場合は自動的に退職となることを定める方法です。この条項を真正面から法的に問題がないかを論じた裁判例はありませんが、実務上は、有効であることを前提として取り扱いしているのが現状です。無断欠勤の期間は、辞職の効力が発生するのが14日であることや1カ月という賃金支払期間を考慮して、2週間ないし1カ月と定めている企業が多いようです。

対策としては、第一に、一定期間勤務しない場合は当然に自然退職とする規定を就業規則に置くことです。例えば、豊田自動織機製作所事件では、「事故欠勤が1ヶ月以上で特別の理由が認められないとき」は自動退職となるという定めは、使用者の解雇の意思表示を待つことなく、1カ月の事故欠勤期間満了と同時に自然退職となることを定めたものとされています。

第二に、上記の「事故欠勤」には、“従業員の都合により出勤していない“という意味が込められている可能性があるので、「原因不明の不出勤」に対応するために「事故欠勤」という言葉を拡大して定義づけるか、「原因のいかんを問わず、会社に出勤しない状態(欠勤)または会社が本人と連絡がとれなくなった状態(行方不明)が1カ月以上経過した場合は自然退職とする」などの規定を置くことです。ただし、行方不明とは、客観的に決まるものであり、電子メール等で連絡が取れている場合はこれに該当しません。

なお、従業員が行方不明になった場合に、従業員の家族から退職届を提出させ、会社には一切迷惑はかけないという趣旨の念書をとるケースも実際にはあるようです。もちろん法的な効果には問題がありますが、自動退職の定めがないケースでは、緊急の措置としてやむを得ない措置かと思われます。(岡本)

 

 

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