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新型コロナウイルスのワクチン接種・非接種情報の取扱いにかかる法的問題
新型コロナウイルスもワクチン接種が進んでおり接種の強制やワクチンハラスメントなどが問題として取り上げられることが増えてきています。原則としてワクチン接種は自由であり少なくとも日本においては接種を強制できません。厚労省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」には、「新型コロナワクチンの接種は国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。」とあり、法律上も個人の接種は義務付けられていません。
職場においても、接種の強制や非接種者に対する不利益な取り扱いは許されておらず、非接種を理由とした解雇や非接種の従業員の勤務を拒否することなどは一切できません。これらを行った場合には、ハラスメントに該当する可能性があります。これにも、同じくQ&Aに、「新型コロナワクチンの接種は強制ではなく、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けないことを理由に職場において解雇、退職勧奨、いじめなどの差別的な扱いをすることは許されるものではありません」とあります。
他方、ワクチン接種は効果のある感染対策であるため、企業としては、社内・社外の感染対策等に従業員がワクチンを接種した事実(および接種していない事実)ならびにその情報を積極的に活用したいと考える場合があります。
まず、顧客に対する感染対策として、対面の顧客対応業務を接種者に担当させることは、安全配慮の観点からは望ましく必要性は認められます。しかし、接種者からは感染リスクを下げるためにワクチンを接種したのに感染リスクが高い業務に従事させられることへの不満などの問題が生じます。この点は、ワクチン接種以外の感染対策を十分に行っていれば、安全配慮義務との関係では直ちに問題になるわけではありません。ただし、接種者であっても基礎疾患があるなど重傷化リスクが高い従業員に対しては、希望に応じて個別対応を検討すべきです。また、妊婦に対する母性健康管理措置等があることにも注意が必要です。
次に、ワクチン休暇の申請によって、従業員のワクチン接種情報を取得する場合ですが、ワクチン接種情報は個人情報に当たります。個人情報の取得については、利用目的を特定したうえで通知公表が必要です。そして、個人情報はその目的以外に利用することはできません。
ワクチン接種情報の活用例としては、顧客に対して従業員のワクチン接種率を公表することも考えられます。前述の通り、ワクチン接種情報の取得にあたっては、利用目的を通知公表することが必要ですが、接種率自体は個人が特定されるものではなく、個人情報に当たらないため、原則として第三者提供等の問題は生じないと考えられます。(岡本)
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