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採用内定後の信用調査によって判明した事実による内定取消しの限界

新たな人材の獲得にあたっては、ミスマッチを防ぐために的確に把握しなければならない事実(経歴、職務能力と適性、転職理由等)がある一方、応募者の思想・信条や個人情報の観点から質問を控えなければならない事実もあります。

厚生労働省「公正な採用選考の基本」では、公正な採用選考を妨げるものとして、A)本人に責任のない事項では、本籍・出生地、家族に関すること、住宅状況を挙げ、B)本来自由であるべき事項では、宗教、支持政党、労働組合の加入状況や活動歴、購読新聞・雑誌、愛読書などの質問、調査を戒めています。

 

ドリームエクスチェンジ事件(東京地裁 令和元.8.7判決)は、デジタル通信や旅行業を目的とするY社が、人材紹介会社から紹介されたXの採用を決定通知した後、信用調査により判明した事実を理由に採用条件を変更し、その後内定を取り消した事案です。

Y社の主張した争点は、以下の4点です。

①Y社はXの職務能力等の詐称により誤解して内定通知を出したので、労働契約は錯誤無効。

②Xに求めていた職務能力は、総合旅行業務取扱管理者の資格保有と新たなビジネスを企画・立案・実行できる幹部候補としての能力だが、Xは職務能力・経歴、前職の退職理由等のいずれも詐称し、詐称事実は採用時には知ることができないものであったから、内定を取り消すことについて、客観的合理性、社会的相当性がある。

③Y社は、詐称事実が判明したことから労働条件の変更をして出社を命じたが、Xは出社せず、その3ヶ月後には他の旅行社に就職しているから、XはY社で就労する意思はなく、本訴は権利濫用である。

④Xの主張が認められるとしても、バックペイの金額は、Xが他社から得た賃金額を控除すべき。

 

これに対し、裁判所は、各争点について、以下のように判断し、Xが請求したY社従業員としての地位の確認と未払い賃金の請求については、未払い賃金のみ認め、地位の確認請求は却下しました。

①採用内定の取り消しは、その行使は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これ理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができるときに限られる。

②そもそもY社の主張している事実は、内定前に調査していれば容易に判明した事実であり、錯誤、内定取消しの事実は認められない。

③Xは、のちC旅行者に勤務しているのであるから、地位確認の請求は訴えの利益がないが、本件訴訟の提起が権利濫用とまではいえない。

④内定取り消しは無効であるから、未払い賃金を請求できる。ただし、C社で賃金を取得するすることとなった以降は、月額賃金の6割を請求できる。

 

採用内定の取消しは、解雇法理を受け厳格です。採用の自由が広範に確保されているのとは対照的であり、それだけに採用段階での慎重な選考が求められます。安易な採用によるミスマッチは、お互いにとって不幸な結果となります。

本件では、人材紹会社を介して採用したY社には、Xに関する事前調査の確認を怠っていたという決定的なミスがありました。Y社としては、事前に信用調査で情報を認識していれば、Xを採用しなかったことでしょう。内定取消しに厳格な判例法に従えば、肯定せざるを得ないと思います。(岡本)

 

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