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人事・労務・給与就業規則

賃金の減少を伴う役職定年制の導入は、労働条件の不利益変更に当たるか

組織の新陳代謝と人材登用を目的として課長や部長職に役職定年制の導入を検討する会社が増えています。役職定年制は、役職者がある一定の年令に達したときにその任を離れる制度であり、主に組織の新陳代謝・活性化の維持、人件費の増加の抑制、従業員構成の高齢化に伴うポスト不足の解消などの狙いから導入される制度です。役職定年制は、おおむね1980年代から行われた55歳定年制から60歳定年制への移行に際して導入する企業が増加し、企業規模が大きいほど導入している企業の比率は大きいとされています。

任期満了でポストから外れる役職者の賃金を役職手当の支給をやめるとともに、基本賃金も一定率ダウンさせることについては、慎重に判断すべきです。

労働契約法では、就業規則の変更により労働者に不利益に労働条件を変更するためには、①労働者との合意、または②その変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであることが必要であると定めています。

役職定年制のような中高年の特定階層を対象とした賃下げに対して、みちのく銀行事件(最判 平12.9.7)判決では、役職制度の変更に関しては合理性を認めた一方、大幅な賃金減額を伴う賃金体系の変更については、特定層の行員に賃金コスト抑制の負担を負わせるもので、その程度も大きく、救済・激変緩和措置も不十分であり相当性を欠き、多数組合との合意も大きな要素とすることはできない、として合理性を否定しています。

秋北バス事件(最判 昭和43.12.25)では、就業規則が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されない。そして、当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成または変更が、その必要性および内容の両面から見て、それによって労働者が被ることとなる不利益の程度を考慮しても、なお法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成または変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである、としています。

また、過去5年間に支払われた給与、賞与および退職金との差額を求めた事件(K信用金庫事件)では、役職定年制の適用から退職までの間、これによる調整後の給与や賞与を原告が受給してきたことに対し、金庫側は、退職定年制の導入に黙示の同意をしたと主張しましたが、裁判所は「自由な意思に基づき同意の意思を表明した場合に限って同意したことが認められるのであって、原告らがその内容を理解しながら積極的に反対の意思を表明することなく変更後の給与を受け取っていたことをもって、本件就業規則の変更について黙示的に同意したと認めることはできない」として、金庫の主張を退けています。(岡本)

 

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