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在宅勤務を基本とする勤務形態について、通勤定期代を廃止すること

労働者は、使用者との労働契約で定められた就業場所において労務を提供しますが、これに要する費用は、本来労働者が負担すべきものです。したがって、使用者は、労務の提供に必要な通勤費の支給義務を負わず、これを支給するか否か、支給するとしていかなる条件を定めるか否かは、使用者の自由な裁量に委ねられています。
もっとも、労働者の出勤にかかる費用を補助する目的で、労働契約や就業規則等において、その支給基準を定めた場合には「賃金」に該当し、労働基準法の保護の対象になります。

使用者が、賃金を含め労働条件を変更しようとする場合は、原則として、労働者の合意を得る必要があります。そして、使用者が支給基準を決めて支給する通勤費は、「賃金」に該当しますので、通勤定期券を廃止して、都度交通費精算に変更することは、賃金の条件を変更することを意味します。したがって、本件変更をするためには、個々の労働者の同意を得る必要があります。

通勤定期代は、一般的には、就労場所に出勤するための費用を補助する趣旨で支給されているので、在宅勤務を前提とする場合は、基本的には労働者の費用負担は生じず、就労場所に出社した時に発生するにすぎないことから、本件変更については、比較的労働者の理解は得やすいと考えられます。もっとも、在宅勤務となることにより通勤費が少なくなる一方で通信費等の労働者の費用負担が増える可能性や、賃金総額が減少することにより労災保険や社会保険の給付額が減少する可能性もあります。
そこで、個々の労働者の合意を得るにあたっては、上記趣旨を説明するとともに、例えば、在宅勤務手当を支給するなどして労働者の賃金総額に配慮する措置を講じたうえで、後の紛争やトラブルを防止する観点から書面により同意を得ておくことが望ましいと言えます。

多くの企業では、就業規則によって統一的・画一的に労働条件を設定しており、法律上も、合理的な労働条件を定めている就業規則が労働者に周知されている限り、使用者は、各労働者の合意を得ることなしに個別の労働条件を定めることができます。しかし、特に賃金の条件を不利益に変更する場合には、その合理性が厳格に判断されます。

従来支給してきた通勤定期代を廃止して、出社の場合に都度、交通費を精算する場合は、まず、労働者の賃金が減少することになりますので、上記不利益の変更に該当します。ただしその不利益に合理性があるかですが、通勤費を支給する趣旨に鑑みれば、通勤定期代を廃止して出勤の都度実費を支給することに変更することも相当程度の必要性があるものと考えられます。また、変更により賃金総額は減少しますが、労働者の不利益の程度はそれほど大きくはないと判断されます。
そこで、代替的な措置として在職勤務手当を支給するなどしてできる限り賃金総額が減少しないように配慮するとともに変更の理由や内容について各労働者に必要な情報を提供して説明を行えば変更後の就業規則の相当性や合理性を高めることができると思われます。(岡本)

 

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