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定年後再雇用者の基本給の一律減額や賞与を不支給にすることは可能か

正社員と有期雇用労働者である定年後再雇用者との待遇に相違は、パートタイム・有期雇用労働法8条の問題になります。正社員と定年後再雇用の待遇の相違が問題となった長澤運輸事件で、最高裁は、①定年後再雇用者を長期間雇用することは予定されていないこと、②定年後再雇用者は、定年退職まで無期契約労働者として賃金の支給を受けていたこと、③一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されていることから、定年後再雇用の事実を「その他の事情」として、待遇の相違が不合理であることの評価を妨げる事情として考慮されることを認めており、同一労働同一賃金ガイドラインも定年後再雇用が「その他の事情」になり得ることを認めています。

定年後再雇用であることが「その他の事情」として考慮され得るため、職務の内容や職務の内容・配置の変更の範囲に特段の相違がない場合でも、定年後再雇用者の賃金を一律減額することは、直ちに不合理と評価されるものではなく、実際に長澤運輸事件でも、正社員と定年後再雇用者である嘱託乗務員において職務の内容・配置の変更の範囲に相違がない事案でしたが、基本給等の相違について不合理でないと判断されました。

もっとも、同事件で最高裁は、①嘱託乗務員らは、定年後再雇用者であり、一定要件を満たせば老齢厚生年金を受給できること、②団体交渉を経て、同年金の支給開始まで2万円の調整給が支給されることといった事情のほか、③正社員と嘱託乗務員との間のこれら基本給等の相違が2~12%にとどまることを考慮しており、基本給の相違の幅が比較的小さい事案であったことが特徴です。

また、定年後の再雇用者について、①若年正社員の給与額を下回っていること、②正社員定年退職時の給与額が同年代の平均的な給与額を下回っていること、③基本給の減額について労使の合意がなされた事情がないこと、④基本給が労働の対償の中核であること等を理由とし、労働者の生活保障と言う観点を踏まえ、定年後の再雇用者の基本給が定年前の6割を下回るのは不合理であると認めた裁判例があることにも注意が必要です。

定年後再雇用者について、正社員に支給している賞与を不支給とすること自体は可能ですが、このような相違が不合理でないかは、当該賞与の趣旨を踏まえた上で、基本給や諸手当も合わせた年収総額を対比して検討する必要があります。
実際に長澤運輸事件でも、正社員のみに賞与(基本給5ヶ月分)を支給することの不合理が問題になりましたが、最高裁は、①賞与が月例賃金とは別に支給される一時金であり、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の意欲向上といった多様な趣旨を含み得るものであること、②嘱託乗務員は、定年退職時に退職金の支給を受けるほか、老齢厚生年金の支給やその報酬比例部分の支給が開始されるまで会社から調整給の支給を受けることも予定されていることのほか、③嘱託乗務員の年収は定年退職前の79%程度となることが想定されることといった事情を総合考慮し、同事案における賞与の相違は不合理でないと評価しています。

以上から、定年後再雇用者の基本給の一律減額や賞与の不支給は可能ですが、基本給の減額幅や年収総額の対比に注意が必要です。(岡本)

 

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