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人事評価

年功的な要素が強い人事評価では、「成績を上げているのに低評価が続くのはおかしい」として、従業員の納得が得られない評価を巡り、トラブルになるケースがよくあります。

人事評価は、通常、昇給や賞与、昇格を決定する上で、その指標として重要な役割を果たしています。
この人事評価による査定は、基本的に各企業の裁量的判断に委ねられ、当該査定の妥当性については、査定権者が人事評価制度の趣旨に反して裁量権を濫用したという場合でなければ、不法行為は成立しないとされています。裁判例においても「人事考課をするにあたり、評価の前提となった事実について誤認があるとか、動機において不当なものがあったとか、重要視すべき事項を殊更に無視し、それほど重要でもない事項を強調するとか等により、評価が合理性を欠き、社会通念上著しく妥当を欠くと認められない限り、これを違法とすることはできない」、また、「従業員に対する使用者の人事評価にあっては、基本的には使用者の裁量が認められるべき」と判示されています。
このように、原則としては、人事評価については、その評価対象項目や査定の基準、その運用手続きについて、各企業に広い裁量権が認められています。

もっとも、裁判例では、併せて違法となる場合もある旨述べられており、「人事評価が、定められた評価制度に基づいていないなど社会通念に照らして著しく不合理である場合には、人事権を濫用するものとして、不法行為となる」と判示するなど、人事権の濫用と判断された場合には、不法行為として違法である旨認定がなされています。
この人事権の濫用の具体的なケースは、「性別や社会的身分で評価がなされた」「使用者が、嫌がらせや見せしめなど不当な目的のもとに特定の労働者に対して著しく不合理な評価を行った」「評価期間対象外の事象を査定対象とした事案」「結婚の有無という理由に基づいて一律に査定した」「不当労働行為の事案」などは、違法と判断されています。

以上を踏まえると、人事評価の査定の違法性は、査定をする者が、人事評価制度の趣旨に反して裁量権を濫用した場合に限定されるものと考えられます。
賃金体系に年功的要素が含まれていること自体は、従来からの日本の賃金制度で取り入れられてきたところであり、社会通念上妥当を欠くとはいえませんので、従業員の評価が上がり切らず相当の評価に至らなかったとしても、それはあくまで使用者側の人事権の裁量の範囲内ということになります。

あらためて、人事評価制度の内容(評価項目や基準)、実際の人事評価の運用を従業員に説明し、評価者のための評価者訓練も行い、それぞれ適切な取り扱いがなされているかをあらかじめ検討しておくことが大切です。(岡本)

 

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