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試用期間の延長

試用期間の長さは、就業規則ないし雇用契約で定められることが通常であり、企業と労働者との間の労働契約の内容に他なりません。したがって、試用期間の延長は労働契約の変更に当たり、企業が一方的に行うことは許されず、就業規則や個別合意などの契約上の根拠が必要になります。そこで、実務上は、会社は就業規則に、「会社が必要と認めるときは、試用期間を最長〇ヶ月延長することができる」などの規定を置いています。

明治機械事件(東京地裁 令和2.9.28判決)は、試用期間延長後に会社から本採用を拒否された原告が、解雇無効を求めた事案です。原告は、平成30年4月1日に入社し試用期間は3ヶ月、被告の就業規則には「3ヶ月の試用期間を設けることができる」旨の規定がありました。原告には問題行動がありました。入社後のマナー研修で外部講師に対し、「なぜ、これを学ぶ必要があるのか」「こんなことをしてお客さんを騙すのですか」「やりたくないので、やらなくていいですか」などと発言し、また、作業がうまくいかないときに大声を出して工具を投げつけたり、「この研修内容は、自分の仕事ではない」と発言したりしていました。

被告は試用期間を1ヶ月ごとに3回延長し、その間に何度か退職勧奨をしましたが原告はそれを拒否しました。裁判所は解雇を無効とし、担当者が退職勧奨の面談において、「生産性のいないやつ」「給料分、他の社員たちに与えた方がより効率的」などと、侮辱的な表現を用いたこと、さらに、原告に精神的苦痛を与えて退職勧奨に応じさせる目的で会議室に一人配置をし、自習させ続けた処遇及び退職勧奨に係る言動は、不法行為に当たると判断しました(原告はすべて面談を録音していました)。

なぜ解雇無効になったのでしょうか。決めては2つです。①会社の退職勧奨者の発言と、②会社が原告を他の従業員から別室に隔離して、指導もせず簿記の実習だけをやらせていたことです。この2つからして、全体として会社は退職させる意図や動機をもって試用期間を延長し、一人で作業を行わせ違法な退職勧奨をしたものと認定したと思われます。このように、労働問題や問題社員対応では、会社の動機や意図がどこにあるかが非常に重要です。裁判官も原告が問題社員であることは認めており、試用期間の延長以降、会社が丁寧に業務を与え日報や面談などで指導教育していれば、解雇は有効と判断されていた可能性は高かったと思います。(岡本)

 

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