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賞与の不支給

 今般の新型コロナウイルスの影響で業績の大幅な落ち込みが見込まれるため、慣例的に夏季・年末とも一定の月数の賞与を支給してきた企業が、年末の賞与を不支給にしたいと考えるところは多くあります。

 賞与の制度は、任意の制度であり、その設計は企業の裁量の問題であって、従業員に当然に賞与の請求権が認められるものではありません。ただ、賞与に関する事項は制度化するときは就業規則への明記が必要です。また、この賞与の設計を、年功的に位置づけるのか(例えば、「月額賃金×2~3ヶ月分」とし、査定なしの一律支給)、能力主義的に位置づけるか(例えば、職務遂行の結果と行動から個別に金額を決定)も企業の裁量です。

 賞与制度が任意のもので設計が自由である性格上、従業員の賞与請求権は当然に認められるものではありませんが、請求権が認められるケースもあります。

 一般的なケースとして、「賞与は年2回、7月および12月に支給する。ただし、会社の業績が著しく低下その他やむを得ない事由がある場合には、支給時期を延期または支給しないことがある。また、支給率は会社の業績および従業員の勤務成績等を考慮して各人毎に定める。」という規定が多くみられます。この程度では、就業規則(賃金規程)から直ちに賞与請求権は認められません。結局、一義的に金額が計算できるだけの具体的な規定でなければ、それだけで請求権を根拠づけることはできない、ということになります。

 しかし、就業規則の規定と労使慣行があることにより請求権が認められるケースもあります。裁判例では、「控訴人の専任教員の賞与は、留学、休職などの事情がない限り、専任教員ごとに個別に査定するとの運用はされておらず、とりわけ、平成29年度以降は、給与額に5.25を乗ずることで機会的に賞与の額を算定するようになったものであるから、控訴人の専任教員は、留学、休学の事情がない限り、成績査定をせずに賞与が支給されていると認定するのが相当」と判示されたものがあります。

 ポイントは、長年にわたって夏季・年末とも例えば2か月分ずつを支給してきたことが、賞与請求権が認められ得る労使慣行といえるかどうかです。
業績の大きな変動がなかったが故に各2か月分支給してきたのであって、業績の大きな変動があれば、それに応じて支給したということなら、各2か月分支給することは労使慣行とは認められません。これまで業績の大きな変動がなかったため、結果的に2か月分の支給となったのであり、今般のコロナウイルスの影響で業績が大きく落ちこむということなら、その業績に応じた賞与支給は可能で、赤字まで転落するのであれば不支給にすることも可能です。(岡本)

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