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新型コロナウイルス感染の労災適用
新型コロナウイルス感染症に係る労災の取り扱いについては、医療従事者等とそれ以外の職種によって取り扱いが異なり、医療従事者等については、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象とされています。
一方、医療従事者以外の場合は、職場に感染者がおり、感染者と濃厚接触した場合のように感染経路が明らかで、かつ感染が業務によるケースは労災と認められます。なお、感染経路が特定されない場合は、個別に調査し、判断されることになりますが、とくに感染リスクが相対的に高いと考えられる業務については、①複数の感染者が確認された労働環境下での業務、②顧客との接近や接触の機会が多い労働環境下での業務が考えられます。具体的には、複数の感染者が確認された労働環境下での業務とは、「請求人を含め2人以上の感染者が確認された場合をいい、例えば、施設利用者が感染している場合等」が想定されます。また、顧客との接近や接触の機会が多い労働下での業務とは、「小売業の販売業務、バス・タクシーの運送業務、育児サービス業務等」が想定されます。
小売業の販売業務で、店舗を訪れた顧客の一人が感染していたこと分かり、顧客の対応をした社員や同じ店舗で勤務していた社員も感染した場合などは、状況から判断しても新型コロナに感染していた顧客から接客対応した社員に感染し、さらに感染した社員と濃厚接触した複数人の社員に感染が広がったと考えられます。したがって、感染経路が特定され、感染が業務上であると考えられることから、顧客対応した社員および複数人の社員について、労災として認められる可能性は高いと考えられます。
医療従事者以外の職種については、顧客など不特定多数の人と接触する機会が多い職種、例えば、小売業の販売職やタクシー・バスのドライバー職等は比較的労災として認められやすく、不特定多数の人と接触する機会が少ない職種では、感染機会や感染経路を特定することが困難であることから、労災として認められにくいと考えられます。(岡本)