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退職代行会社からの明日以降の年休の取得の連絡は認めなければならないか
退職代行とは、一般的に「退職する旨の意思表示」を従業員本人に代わって会社に伝えたり、退職に関する手続きを代行したりすることをいいます。
退職代行のうち、業者が行うものを一般に退職代行会社といいます。退職代行会社は、法的な交渉の代理権がないため、従業員本人が会社に伝えたい内容を代わりに伝えるという建付けであり、一般的に「使者」としての扱いになります。「従業員の〇〇さんが退職したいと言っているので、代わりにお伝えしました」と伝言するイメージです。このような退職代行会社は、依頼者から交渉権限をもらって代理人として交渉するものではないため、弁護士法が禁止する非弁行為には該当しません。
退職代行会社は、あくまで退職の意思表示の代行会社であって、従業員の雇用契約に基づくすべての権利義務について代行ができるわけではありません。特に雇用契約に基づく使用者の業務命令権について、退職代行の依頼によって行使できなくなるわけではありません。業務に関することについて、「直接本人と連絡が取りたい」、「引継ぎをお願いしたい」ということはできますし、退職代行会社も本人に伝言をしてくれるケースもあります。
ただ、本人からは「退職日までの期間はすべて年次有給年休をとる。出社も引き継ぎもしません。業務のことで電話をしてこないで。」といわれることが予想されます。退職日までの労働日のすべてについて年休の取得を申請されることは多く、そうすると会社も時季変更権の行使の余地がなくなります。「年休は〇日前に申請しなければならない」としても、この場合認めないことにはリスクが伴いますので、年休の取得は認めるのが無難です。
退職にあたって会社が貸与したパソコン、スマホ、鍵、制服などの返還を求める必要があれば、時期を指定して返却するよう退職代行会社に伝えます。ただし、口頭でのやり取りよりも貸与物の一覧表を作成し、退職代行会社に送るか、直接本人に送ってよいかを退職代行会社に確認するのがよいでしょう。同様に、会社に残っている従業員の私物をどうするかを決める必要があります。退職代行会社から退職日まで年休をすべて消化して出社しない、との連絡があった場合など、もう会社に来る機会がないような場合には、いつ、どのような方法で引き取ってもらうかです。いずれにしても、勝手に会社が従業員本人の鍵のかかる更衣室や引き出しを開けたりしないことです。貸与物の返還と同時に引き取りに来るのか、郵送で送るのか等を決める必要があります。
なお、本人が担当している業務の引継ぎのために、資料を探したり内容を確信するために、従業員本人の引き出しを開けたり、パソコンを開示・閲覧することは、業務上の必要があるためやむを得ないと考えられます。(岡本)
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