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音信不通・所在不明を当然に退職する事由として就業規則に定めておくことの是非
解雇と退職は法的な効果が異なるため、就業規則には、正確に区別して規定する必要があります。そのうえで、退職事由は、主に①労働者からの辞職の意思表示、②合意退職、③定年、④死亡、⑤休職期間満了、⑥契約期間満了、⑦役員就任といったものが考えられます。もっとも、就業規則に定めただけでは当然に退職の効果が発生しないものもあることから、実際の運用については、注意が必要です。
この中で、「音信不通・所在不明」により無断欠勤状態が続く場合を解雇事由として定める場合も少なくありません。解雇予告除外認定の基準を定めた通達によれば、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合には、労働者の責めに帰すべき事由として除外認定する」とされています。これからすれば2週間以上「音信不通・所在不明」状態が続いた場合には、解雇事由としても相当であるといえます。
もっとも解雇は、労働契約の解除であり、解除するためには意思表示が労働者に到達することが必要ですが、郵送先すら判明せず意思表示を到達させることが不可能なケースもあります。この場合は、意思表示の公示送達を行う場合がありますが、手続きに費用と時間がかかります。
そこで就業規則において、一定期間の音信不通・所在不明状態が続く場合に、自然退職となる条項を設ける例が見受けられます。この期間についても、30日の解雇予告期間を設けていることとの均衡から、30日程度の期間が必要であると解されています。
なお、あくまで音信普通・所在不明によって無断欠勤となっている場合であり、連絡がつくか無断欠勤になっている場合は該当しません。また、労働者本人とは連絡がつかなかったものの、その配偶者とは連絡を取っていたという場合も、「連絡が取れない場合」には該当しないとされたケースもあり、この点は注意が必要です。
「従業員の行方不明となり14日以上連絡が取れないときで、解雇手続をとらない場合には退職とし、14日を経過した日を退職の日とする」との文言の規定につき、「従業員が所在不明となり、かつ被告が当該従業員に対して出勤命令や解雇等の通知や意思表示をする通常の手段が全くなくなったときを指すものと解するのが相当」と判断した裁判例もあります。同裁判例では、会社がメールやFAX等でこの従業員と連絡を取ることができる可能性があったとして、退職扱いは無効と判断しました。
行方不明条項により自然退職とするためには、単に連絡が取れないというだけでなく、会社から取り得る連絡手段(電話、手紙、メール、留守電記録など)を、尽くしておくことが必要です。(岡本)
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