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懲戒処分の種類・内容の定め方は懲戒処分の種類ごとに懲戒事由を定めるべきか
懲戒処分の種類ごとに懲戒事由を列挙している就業規則がありますが、懲戒処分の種類を区別せず一括して懲戒事由を列挙した方が、どの懲戒処分を課すか柔軟に選択しやすくなります。
そのため、懲戒処分の種類を区分せずに一括して懲戒事由を定めておくべきと考えます。他方では、労働者の予測可能性の観点から、懲戒処分ごとに区別して懲戒事由を定めるべきとの見解もあるため、仮に区分する場合は、諭旨解雇及び懲戒解雇とそれ以外の懲戒処分で分けて懲戒事由を規定すべきです。
懲戒事由に頻度、回数、程度等に関する必ずしも必要でない文言が用いられている就業規則が多くあります。例えば「正当な理由なく無断欠勤が〇日以上に及ぶとき」という規定の場合、「無断」という文言や「〇日以上」という文言は、あえて規定する必要はありません。「無断」という文言があると、一報入れたから「無断」ではないという主張がなされる可能性があります。また、就業規則で規定している「〇日以上」には至っていないために懲戒処分ができないということにもなりかねません。
ほかにも、「正当な理由なくしばしば遅刻、欠勤、早退をした・・」「重要な経歴を詐称して雇用された・・」「故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えた・・」「素行不良で著しく社内の秩序または風紀を乱した・・」といった規定にみられる「しばしば」「重要な」「著しく」等の文言も用いる必要はありません。これらの文言がなくとも懲戒処分を課すべき場面は想定されますし、これらの文言があることにより懲戒処分の発動の足かせになってしまうリスクがあるからです。
実務上、業務違反命令や就業規則等の諸規則に違反する行為があった場合に処分をしたいという場面で、就業規則にこれに即した文言がないために懲戒処分の妨げになってしまうことがあります。したがって、業務命令違反や就業規則等違反も懲戒事由として定めておくべきです。
また、あらゆる懲戒事由を就業規則で捕捉することは難しく、就業規則を作成する時点では想定できなかった不測の事態に備え「その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき」といった包括条項は定めておくべきです。もっとも、解雇に際しての労使間のトラブルを防止する観点からは、他の懲戒事由は可能な限り明確かつ網羅的に規定し、包括条項が適用される範囲は限定すべきです。(岡本)
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