カテゴリー:
非違行為に対する懲戒処分に従業員が自認していれば弁明の機会は不要か
弁明の機会の付与の目的が、従業員に対して不利益な処分を科すことに対する手続補償にあることからすれば、事実調査の段階で本人の言い分を聞いていた場合であっても、本人の言い分を踏まえて、会社として具体的にどのような非違行為を認定し、それに対してどのような懲戒処分を科す手続きが進行していることを明示したうえで、改めて弁明の機会を付与することが望ましく、たとえ従業員が自認していたとしても省略すべきではありません。
懲戒処分を科すにあたって、対象者に弁明に機会を付与することは、法律上規定はありません。しかし、懲戒処分が懲戒処分に労働者に対し不利益を科す処分であることに鑑みれば、労働者に防御の機会を与えることは手続き保障の観点からは重要です。また、そのためにも弁明の機会の付与は、具体的な非違行為及びそれに対する懲戒処分が予定されていることを明示したうえで行うことが望ましいと言えます。
つまり、懲戒処分までの流れは、事実関係の調査→事実認定→弁明の機会付与→懲戒処分の選択→懲戒処分の通知となります。
弁明の機会を付与するにあたっては、懲戒対象となる非違行為を告げることになりますが、「横領行為を行った」といったような抽象的内容を伝えて弁明を求めるのではなく、「弁明の機会付与通知書」など、書面で具体的事実を特定するようにしてください。
弁明の機会付与通知書(例)
「当社は貴殿の下記行為に対して、懲戒処分を行う予定です。弁明があれば〇月〇日までに、書面を会社に提出してください。なお、上記期限までに弁明書の提出がない場合は、貴殿に弁明がないものとして懲戒処分に関する審査をすることになりますので、その旨申し添えます。」
ー記ー
「令和〇年〇月〇日から〇月〇日にかけ、本来が自転車通勤であったにもかかわらず、これを通勤経路及び交通手段を偽り、通勤手当合計30万円を詐取した事実
「加害者本人にも十分事情聴取は行い、概ねハラスメントとされている行為を認めたとしても、弁明機会付与は別途必要です。会社として事情聴取で把握した事実をもとに「懲戒対象とする事実」を暫定的に確定させたうえで、弁明の機会を付与する必要があります。
なお、弁明の機会の付与は、弁明の機会さえ与えればよく、現実に弁明させることは必須ではありません。そのため、労働者が応じなかった場合は、弁明はないものとして扱い、手続きを進めることに問題はありません。(岡本)
\大阪梅田で社会保険労務士をお探しの方はお気軽にどうぞ/
――――――――――――――――
■ 岡本社会保険労務士事務所 ■
大阪市北区・曽根崎・新地の社労士・社労士事務所
――――――――――――――――