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採用時、精神疾患について調査することは許されるか、虚偽の告知をした場合は解雇可能か
会社は採用の自由を有しています。採用の自由について最高裁は、「企業は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなるものを雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる」としています。
会社には誰を採用するかという自由が認められていますので、採否の判断資料を得るために労働者の業務遂行能力や適性について調査を行うことも認められています。
一方で、個人のプライバイー保護の観点からすると、何を聞いてもよいわけではありません。あくまでも、会社は社員を雇うために調査するわけですから、予定する仕事の内容に応じて必要な調査しか行うことはできません。
精神疾患の状態によっては、遅刻、欠勤、長期の休職に至る場合が多くあり、少なくとも、いわゆる正社員として長期の雇用を予定して採用する場合は、精神疾患の有無、通院歴について調査することは可能であるといえます。もっとも、精神疾患の通院歴は、人に知られたくない個人情報でもあります。また、10年以上前の精神疾患の通院歴について聞く必要はなく、最近、例えば1~2年前から現在までの通院歴や精神疾患の状態を聞けば、現在労務の提供をすることができるか判断することは可能です。したがって、精神疾患の有無、通院歴については、過去1~2年前から現在までの通院歴や精神疾患の状態を調査すれば足りることになります。
一般に、経歴詐称は懲戒解雇事由になり得ますが、健康情報を偽ることがすべて懲戒解雇事由になるわけではなく、採用にあたり、労務の提供ができるかどうかを判断するうえで重要な健康情報を偽っていた場合にのみ懲戒解雇事由になり得ます。
うつ病であっても、予定されていた職務をするうえで支障がないような病状であれば、仮に採用時うつ病ではないと偽ったとしても、「能力の判定に影響を及ぼすおそれ」は少ないといえ、それのみで懲戒解雇をすることはできません。一方、うつ病の症状が軽症とはいえず、うつではないと偽り、入社後すぐに遅刻、欠勤を繰り返していた場合には、「能力の判定に影響を及ぼすおそれは少なくないといえず、懲戒解雇は可能と思われます。
採用選考の際に、健康状態を調査するため、「過去1年以内に、精神疾患に関連して、医師の診療・治療・投薬を受けたことがあるかどうか」などの項目を、「健康状態チェックシート」として、入社希望者に記載してもらうことも有効です。
チェックシ-トには、利用目的、同意なく第三者に提供しないことを明示します。また記載を拒否する人には、無理に記載させようとしなくとも構いません。健康状態のチェックシートの記載を拒否したことも含めて、採用の際の判断の一資料にできるからです。(岡本)
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