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従業員が退職代行サービスを通じて退職の意思を伝えてきた場合の対応

近年、従業員が、退職代行業者による退職代行サービスを通じて退職の意思を通知する例がしばしば見られます。従業員は、会社と直接やりとりをせずに退職する目的で同サービスを利用しているため、ある日突然、業務の引継ぎもしないまま出社しなくなるケースが通常です。

会社側からすると、引継ぎができないことにより業務に混乱が生じますし、そのまま退職手続きを進めてよいのか、人事担当者も対応に困る場合が少なくないと考えられます。そのため、会社としては、退職時に本人と直接コミュニケーションができるよう、退職代行サービスを通じて提出された退職届は受理しない、また、本来の手続きがなされていない旨就業規則に定めたいと考えるのは自然です。問題は、そのような定めが有効かどうかです。

労働者は、いつでも労働契約の解約の申し入れをすることができ、申し入れの日から2週間の経過により、労働契約は終了するものとされています。この解約の申し入れはそれのみで成立する単独行為であり、労働者の意思表示が使用者に到達しさえすれば、使用者が「受理」しなくても、その効力が発生します。また、退職代行サービスは、本人の退職の意思表示を使用者に伝達する「使者」という位置づけをとっていると考えられますが、「使者」を通じた意思表示であるからという理由だけで、その効力の発生を妨げることもできません。

一方で、退職代行業者の行為が、非弁行為に該当する場合、伝達された退職の意思表示の私法上の効力に影響する可能性があります。しかし、裁判例では、退職代行業者が退職の意思を本人に代わって使用者に伝達したのみである場合、「一般の法律事件」には該当せず、同法72条(非弁行為の禁止)に違反しないと判断した例が複数あります。この解釈によると、退職代行業者が退職の意思を本人に代わって伝達する行為を、一般的に無効と解することは難しいということになります。

以上から、従業員が退職代行サービスを通じて退職の意思を伝えてきた場合、基本的には、退職に向けた手続きを進める方向で対応せざるを得ないことになります。

退職の手続きを進める前提として、退職が本人の意思に基づくものであることを確認する必要があります。本人の出社が途絶えたことと、そのタイミングで退職代行業者から連絡があったことという二つの事実から、その連絡が本人の意思に基づくものである可能性は高いといえますが、何らかの形で本人確認はしておくべきです。

この点については、労働者は、会社と直接やりとりをしたくないから退職代行サービスを利用しており、本人と連絡がつかないことも多いようです。そうすると、現実的な対応としては、退職代行業者を通じた確認をするほかなく、当該業者を通じて本人が署名捺印した退職届を提出してもらうという対応が考えられます。

労働者は、労働契約上の誠実義務として、退職の際、使用者の業務遂行に支障が生じないよう適切な業務引継ぎを行う義務があると解されます。もっとも、労働者が全く引継ぎを行わなかった場合に義務違反を問えるとしても、引継ぎを行わなかったことにより会社がどの程度の損害を被ったかは立証が容易でなく、損害賠償請求等の対応をとることは現実的ではありません。

また、退職代行業者を通じた退職申し入れの場合、退職日まで年次有給休暇を消化する旨の指定が従業員からなされる場合が多く、この場合は在職中に時季が変更できないため、時季変更権は行使できないと解されています。現実的な対応としては、引継ぎのための出社を命じるのはなく、退職代行業者を通じて書面やメール等で引継ぎに必要なやり取りを行うことにならざるを得ないと思われます。

以上から、就業規則で退職代行サービスの利用を禁止しても意味がなく、法的には退職の効果は発生します。従業員は、わざわざ有料の退職代行会社を利用してでも、会社との直接のやりとりを避けようとしている状況にあります。そのため、それは最悪そのようにして取り計らい、今後は、従業員が直接退職の申出をしやすい環境を作っていくことかと思います。(岡本)

 

 

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